プロジェクトについて
Overview of Project

 

To Belongは、日本とインドネシアの国際交流制作企画であり、インドネシアのkomunitas Salihara劇場と共同で創作される、振付家・北村明子とインドネシアのアーティスト達とのコラボレーションによるマルチメディアダンス作品です。

北村明子は、西洋のコンテンポラリー・ダンスのテクニックや作品創作方法論に大きな影響を受けながらも、容易に触れ合うことが当たり前となった西洋的な身体のコミュニケーションに異を唱えるように、ディスコミュニケーションによるコミュニケーション、接触を徹底的に避ける身体同士のコミュニケーション方法、独自の振付方法論を編み出しました。常に西洋的な舞踊テクニックとは距離を置きつつ独自の創作を続けてきた北村が、今注目するのは、自己をも含む「アジアの身体」です。

北村はこの数年、インドネシアの伝統芸能や毎日の生活様式、またシラット拳法などを学ぶことにより、そこでの文化背景や身体観に触れてきました。そして、現代において身体の表現、ダンスを追求する上で、論理的な思考を逸脱する、説明不可能な非合理的な身体の動きに興味を抱いています。

東京のミックスカルチャーの中で育った北村にとって、伝統に強く根付きながら、現代の芸術が発展しているインドネシアの文化形態は、近くて遠い存在です。

アジアにおける伝統的な精神と現代舞台芸術の展開に強く魅かれていった北村が選んだ共同制作者は、音楽家、歌手、ワヤンの影絵師、パフォーマーであるスラマット・グンドノ氏、演劇演出家のユディ・タジュディンらです。また、世界各国の自然環境音と電子音楽、地域性と伝統・現代を自在に横断するサウンドディレクター森永泰弘や、映像作家兼古昭彦が加わり、マルチメディアというくくりで映像表現が背景的に扱われがちな昨今、ダンサーの身体表現と映像表現が対等に存在する作品内容を提示します。

本作品では、北村明子自らの現代的なダンス作品創作の手法に、伝統的な精神が宿る口頭伝承の物語、歌、影絵的要素、映画の持つ物語性と時間性を取り込みます。
伝統―現代に脈々と残るアジアの土地の伝説・神話から、人間の身体の「いま、ここ」と、属性、日本、アジアの身体をテーマとし、ひとつの伝説・神話から出発し、それに対するアーティスト個人の異なる国籍・宗教・思想からなされる「対話」を通し、社会文化背景の差異と類似点を多層的に描くドキュメンタリー性をもつ構造を思考していきます。また、様々な通信形式が可能となる昨今、国境を越えた芸術共同作業のあり方を問い、現代における遠距離間でのアーティスト同士のコミュニケーション方法を模索する共同制作過程自体を対話のコラージュとして構成し、現代のテクノロジーと伝統技法が結びつく様を舞台作品化していきます。

 

バックグラウンドの異なるアーティスト同士の遠距離共同作業の実験

舞踊、音楽、演劇各領域で、インドネシアではワヤンやジャワ舞踊、伝統芸術を発展させることで表現活動を行うアーティストが多く、古くから伝えられてきた神話や物語と現代社会の問題を巧みに融合させ、領域横断的で多岐にわたる活動を展開している。伝統芸術ということからはある意味離れたコンテンポラリー・ダンスの領域で創作を続けてきた北村の手法はまるで異なる。それらの違いを大きな刺激とし、国籍、バックグランドが全く異なる者同士が、「個人」としてコミュニケーションをとりながら作品創作を行う時、時空間を共有するという以外に、どのような方法や内容のやりとりがなされていくのか、という方法論を検証していくことがこの企画のねらいのひとつである。
 

2国間交流に終わらせず、日本発世界へ発信する作品作り

2カ国のアーティストが作品を共同で作るとき、今までは、「二国間の交流」という国際交流のコンテクストにのっとった企画が多く、その作品は当事者の2カ国で上演されて、その2カ国の観客の価値観にとって意味があるというものであったと思われる。
今回は、企画をそのような国際交流のコンテクストの中で終わらせず、2011年度以降、日本の地方都市を含め、世界各地にツアーすることを目指している。すなわち、日本人、インドネシア人以外にも、意味があるような価値の発信ができる作品にすることを目指す。
 

インドネシアのアーティストの活動の幅を広げる支援と交流の場の提供

インドネシアのアーティストたちは、国内芸術支援状況が極めて少ない、限られた状況で創作活動を行っている。ミロトはジャワ伝統舞踊手として国際的に活動しているが、常にそのオファーには伝統舞踊がついてまわり、グンドノは劇場にこだわらず、様々な土地で独自にパフォーマンスの発表をしているが、その内容の過激さやノンジャンルであるが故に、公的に創作の場を得ることが多くはない。そのような活動の場が限られる優れたアジアのアーティストにクリエーションの機会を提供するという意味でも、このプロジェクトは重要であると考える。
 

年齢を経たアーティスト、若手アーティストの活動のありかた

ミロト、グンドノ、ユディ、北村それぞれ、50代、40代と舞台芸術に関わり続けながらひとつの過渡期を迎えている年齢のアーティストである。ある程度それぞれの活動の目標を達成し、次の目標を立てていくことを望んでいるアーティストたちが、個のスタイルに閉じていくのではなく、外部と交流することで、新たなアイデアや活動の幅を広げていく道があることを、下の世代に伝えていきたい。舞台芸術、特に身体表現である舞踊、パフォーマンスが、いつまでも様々な年齢層によって行われ得るものであること、異物と交流し、何かを発信する場所であることを伝えていきたい。またそのような活動を30代前半の音楽家森永泰弘、歌手エンダ・ララス、舞踊家リアントら、また日本国内の20代のダンサーらと共有することも、異なる世代間の交流として意義ある要素となる。

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